はじめまして、治療院コンサルタントの井上です。
今回、寄稿という形で「治療院経営の教科書」にコラムを連載させていただく運びになりました。
どうぞよろしくお願いいたします。
もくじ
初回大幅割引は集客に効果的なのか?
少し業界を見渡してみますと、初回大幅割引を取り入れている院がたくさん存在します。
一部のコンサルタントも、「初回大幅割引は集客に最も効果的だ」といったことをよく言っていますね。
このような背景もあってか、「3回目までは1980円」…といった価格設定を取り入れている院は多いように見受けられます。
先生が気づかない大幅割引の罠
大幅割引を取り入れると、確かに反応率は高くなります。
マーケティングの一般的な理論としては、「まずはお試し価格で…」というのが定石ですからね。
理論としては間違いではありません。
ですが、「身体の健康を扱う」という点で、治療院業界はかなり特殊な業界であることを忘れてはいけません。
結論から言えば、初回大幅割引は諸刃の剣なのです。
なぜなら、集客の反応率が上がる一方、継続来院率は大きく下がってしまうからです。
お試し価格が成立する条件とは?
初回大幅割引によるお試し価格で大きな売上を得ている代表的な業界が、サプリメントや健康食品を扱う通販業界です。
通販のビジネスモデルと治療院経営のビジネスモデルと比較すると、そもそもの前提が違うことに気がつきます。
マーケットサイズが大きいこと
健康食品やサプリメント通販は、日本全国がターゲットです。
日本人口の8千万人から9千万人はターゲットになり得ます。
自動継続課金モデルを容易に組めること
サプリメントなどの健康食品には、自動決済で継続課金される仕組みがあります。
解約には顧客側の自発的な手続きが必要で、プランによっては「3ヶ月、5ヶ月は解約不能」などもあります。
(この手法はは一時期ニュースで取りざたされるほど問題になりましたが、以前は当たり前のように使われていた手法でした)
参考:「お試し」のつもりが「定期購入」に!?第2弾-健康食品等のネット通販では、契約内容や解約条件をしっかり確認しましょう
原価率が低いこと
サプリメントの原価率は非常に安く、安くて5%、高くて20%未満です。
大幅割引で販売し売上から広告宣伝費を差し引いたとしても、それでも黒字のケースが珍しくありません。
リストを収益化できるチャンスが多いこと
通販業界であれば、一度顧客の情報を手に入れてしまえば、新商品や派生商品を案内することができます。
マーケティング用語で言えば、
- アップセル
- クロスセル
- ダウンセル
といった施策が可能です。
治療院経営に初回大幅割引が合わない理由
…このように、お試し価格による集客が成立するためには、このようなさまざまな複合条件を満たしている必要がある。
では、治療院ではどうでしょうか?
マーケットサイズが小さい
治療院のような店舗ビジネスの商圏人口は、都市部で10万人規模です。
地方だとこれ以下で、町単位だと人口7,000人の町もあります。
このうち、患者になり得るような顧客はどれくらいいるでしょうか?競合店舗は何店舗あるでしょうか?
冷静になって考えてみると、大量集客には現実味がないことが容易にイメージできると思います。
院経営に大切なのは「大量集客」ではなく「1人の患者も取りこぼさない、離脱させないマーケティング」な訳です。
割引価格で来院した患者の継続来院率が低い
初回大幅割引で集客した患者の場合、1週間以内のリピート率は一般的には60%以下になります。
また、1ヶ月の平均来院回数は2回から3回で終わってしまうこともわかっています。
原価率(人件費)が高い
初診の場合、1人の患者を診るために1時間程度かかるはずです。
1人治療院で、先生の1時間あたりの時給を5,000円だと仮定してみると、初回で大幅割引で余裕で赤字になります。
もちろん持ち出しは発生していませんが、先生の人件費を原価として考えると大赤字になるのがおわかりいただけると思います。
新サービスや派生商品を容易するのが難しい
初回で来院をやめてしまった患者や、継続来院をやめてしまった患者に対して、何か新しい商品やサービスを販売することができるでしょうか?
おそらく、簡単な話ではないと思います。
まとめ
初回大幅割引が、治療院経営の足を引っ張ることになりかねないことがお分かりいただけたでしょうか。
「じゃあ、治療院にとってふさわしい集客のモデルってどんなモデルなの?」
と思われたと思います。
それについては、次回のコラムでお伝えできればと思います。
引き続き、どうぞお付き合いください。
7,225人の治療家が受講してきた動画セミナーで、
無料で治療院経営について学んでみませんか?